Web広告に対して実施される不正行為「アドフラウド」。日本は、アドフラウド発生率が世界トップクラスで、1,300億円を超える被害を受けていることをご存知ですか。今回は、Web広告を出す全ての企業が知っておきたい「アドフラウト」について、発生理由、放置するリスク、具体的な対策方法を解説します。
目次
<基本篇>
1. アドフラウドとは?
・アドフラウドを発生させる狙い
・アドフラウドの種類
2. アドフラウドを放置するリスク
・無駄なコストが発生する
・自動入札のノイズとなる
・経営上の判断を誤る可能性がある
3. 日本国内のアドフラウド発生率は世界ワースト2
<実践篇>
4. アドフラウドへの対策
・ホワイトリストを作成する
・怪しいクリックを行うユーザーを確認する
・広告配信の結果から不正サイトがないか確認する
・ツールの導入でディフェンスを強化する
・信頼のできるDSP業者を選ぶ
5. まとめ
アドフラウドとは?
アドフラウド(ad fraud)とは、advertisement(ad=広告)のfraud(詐欺)、つまり「広告詐欺」を意味します。
Web広告費用を不正に取得する行為で、ハッカーや悪徳業者が関係するケースも多いと考えられます。
具体的には、不正プログラムや詐欺サイトなどを用いて、コンバージョン(CV)につながらないクリックや自動リロードを引き起こすことで、広告収益を不正に獲得します。
1. アドフラウドを発生させる狙い
アドフラウドを発生させる狙いは、主に以下の3つです。
<アドフラウドを発生させる狙い>
- 広告収入の水増し:クリック数を意図的に増やし広告収入を得る
- 人的な嫌がらせ:競合に対する悪質な機会損失
- データ販売のための情報収集:広告主の商品情報などのデータを集めて販売する
広告収入の水増しは「金銭」、人的な嫌がらせはライバルの予算を無駄に消化させることによる「機会損失」が、 アドフラウドを実施する目的です。 一方、データ販売のための情報収集は、広告配信される情報データを収集・販売することが目的です。
悪意のないケースもありますが、一般的には誤クリック・不正クリックなどと共に「無効なトラフィック」に分類されます。
2. アドフラウドの種類
アドフラウドには、主に以下9つのような種類があります。アドフラウドの手口は多様化しており、9つ以外にも様々な種類がありますが、ここではアドフラウドの代表的な手口を知っておきましょう。
アドフラウドの種類 |
概要 |
隠し広告 |
別の広告を重ねるなど、ユーザーが認識できない形で広告を表示して、表示回数を稼ぐ |
ブラウザの自動操作 |
不正なプログラムによるブラウザの自動表示で、クリック やインプレッションを不正に生み出す |
偽ドメイン |
類似サイトを作成し、ドメインを偽ることで、広告費を不正に取得する |
自動リロード |
広告表示を自動更新で何度も表示させることで、インプレッションを稼ぐ |
広告の差し替え |
不正に広告を差し替えることで、不正サイトが広告収入を得る |
クリック洪水 |
実際にはないクリックが、大量にあったように偽装する |
デバイスファーム |
大量に設置したデバイスから不正なクリック・表示を繰り返す |
クッキー感染 |
Cookieの上書きによって、 ユーザーが不正サイトの広告を見たように偽装して広告収入を獲得する |
データセンタートラフィック |
データセンターの使用していないIPアドレスなどを利用し 、広告に不正アクセスする |
アドフラウドを放置するリスク
アドフラウドを放置すると、企業の大きな損失につながる可能性があります。アドフラウドを放置することによる、具体的なリスクは以下の通りです。
<アドフラウドを放置するリスク>
- 無駄なコストが発生する
- 自動入札のノイズとなる
- 経営上の判断を誤る可能性がある
ここからは、それぞれのリスクの詳細について見ていきましょう。
1. 無駄なコストが発生する
Web広告の広告費は、クリックやインプレッションの数に応じた費用が、サイト運営者へ支払われます。仮に不正な手段でクリックやインプレッションが増えた場合、成果に繋がらないにもかかわらず、広告費用だけが増大することになるのです。
株式会社Spider Labsは、日本における2022年のアドフラウト被害額を「1,335億円超」と発表しています(※1)。
(※1「アドフラウド調査レポート2022年通年版」株式会社Spider Labs)
2. 自動入札のノイズとなる
自動入札とは、Web広告の入札単価を自動調整する仕組みです。 自動入札は、広告配信データを学習して実施されますが、アドクラウドによって正しいデータが得られないと、自動入札も正しく実施されなくなる恐れがあります。
3. 経営上の判断を誤る可能性がある
アドフラウドによって広告費が増えると、正しいデータが得られなくなります。つまり広告費のうち、何割が一般ユーザーのクリックで生じたものか(あるいは悪質なクリックで生じたものか)が分からないためです。その結果、広告の運用効果を誤って受け取り、経営戦略の立案や経営判断を誤ることにつながる恐れがあります。
このような事態を避けるためにも、正確な広告運用データを把握することが、極めて重要となるのです。
日本国内のアドフラウド発生率は世界ワースト2
グローバルテクノロジー企業「インテグラル・アド・サイエンス社」(IAS)によると、日本のアドフラウドの発生率は、シンガポールに次ぐ「世界ワースト2」でした。世界のアドフラウド発生率の平均は1%程度であるのに対して、日本は2.6%の高さです。
日本においてアドフラウドの発生率が高い原因の1つには、対策に取り組む広告主が少ない可能性が挙げられます。また、CPM(Web広告の表示1,000回ごとにかかるコスト)が高く、悪質業者やハッカーにとって儲かりやすい、魅力的な市場である点も理由となっています。
(参考出典 「Japan continues to witness high ad fraud while emerging markets make headway: IAS report」)
*2021年前半時点、IAS地域内におけるデスクトップディスプレイに関する広告不正発生率のデータ)
アドフラウドへの対策方法
世界の中でも、アドフラウドの発生率が高い日本。アドフラウドへの対策が早急な課題と言えます。具体的には、以下の4つのような対策方法があります。
<アドフラウドへの対策方法>
- ホワイトリストを作成する
- 怪しいクリックを行うユーザーを確認する
- 広告配信の結果から不正サイトがないか確認する
- ツールの導入でディフェンスを強化する
- 信頼のできるDSP業者を選ぶ
「正確な広告運用データの取得」「無駄なコストの削減」などのために、可能な対策から早急に取り組みましょう。
1. ホワイトリストを作成する
ホワイトリストとは、安全性が確認されたサイトのリストです。ホワイトリストの作成には、ツールを用いて、現時点における安全性が確認できたサイトを、リスト化します。そして広告配信は、ホワイトリスト上のサイトのみに実施しましょう。年月が経つにしたがって、サイトの安全性が低下するケースもあるため、確認は定期的におこなってください。
2. 怪しいクリックを行うユーザーを確認する
「リロードを秒単位で繰り返す」「同じ端末から膨大にアクセスする」「怪しいクリックを行う」といったユーザーは、アドフラウドの可能性が高いです。このようなユーザーを見つけ出すためには、アクセス解析用のタグを設定することが有効となります。アドフラウドの可能性が高いユーザーは、ブラックリストとしてまとめておくと良いでしょう。
例えば、Google広告では、IPアドレス単位で広告にクリックできないように除外(遮断)できるため、ブラックリストのユーザーに対してはそのような措置を講じてください。
3. 広告配信の結果を確認し不正サイトがないか確認する
広告配信の結果(実績データ)も、アドフラウドの特定に役立ちます。そして不正サイトの疑いがある場合は、ブラックリストにまとめた上で、広告出稿を停止しましょう。
具体的には、著しくクリック率が高い(もしくは低い)、未払い・不正注文が他のサイトと比較して多いなどの場合は、不正サイトの疑いがあります。
4. ツールの導入でディフェンスを強化する
計測ツール・対策ツールの導入は、アドフラウドに対する防御に欠かせない対策です。アドフラウドの効率的な検知・ブロックにより、健全な広告運用とともに、人的コストの削減にもつながります。
計測ツール・対策ツールを提供する代表的なサービス例は、以下の通りです。
- IAS:世界で認知されるアドフラウド対策ツールを提供
- CHEQ:デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)の認証事業者で検知アルゴリズムは2,000以上
- Spider AF:ブロックした金額の可視化が可能な国内大手サービス
5. 信頼のできるDSP業者を選ぶ
DSP(Demand Side Platform)とは、広告主の広告効果(費用対効果)を最大化するためのプラットフォームです。DSPサービスは複数存在しますが、信頼性の高い業者を選ぶことが、非常に有効なアドフラウト対策となります。
例えば、当社クレディセゾンが提供する「セゾンDSP」は、クレジットカード会員(セゾンカード会員)のデータを活用した広告配信サービスです。カード申込時にお客様から直接いただく情報を活用しているため、隠し広告などの有害なリスクを回避することができ、生活者へ確実にメッセージを届けることが可能です。
また、クレジットカードの会員情報(属性データ)とカード利用情報(購買データ)に基づき、高精度で幅広いターゲティングセグメントをご提供しているので、サービスの対象ペルソナ像に合わせたアプローチを実現できます。
具体的には「高い購買力を持つユーザー」「特定の商品・サービスに関心の高いユーザー」などの通常のセグメントをはじめ「自社顧客・競合利用者・求める顧客像の類似ユーザー」といった、拡張機能を用いたセグメントも可能です。
Web・SNS媒体ほか、ニュースアプリ・アプリ・SSPなど、幅広いメディアへの配信に対応しています。
加えて「セゾンDSP」では、詳細な配信実績レポートにも対応。日数・性別・年齢・エリア・配信ネットワークなどの「粒度」、クリック数・クリック率・クリック単価・表示回数・表示単価・ 配信額・CV数・CV率・CV単価などの「指標」に基づくレポーティングが可能で、アドフライド対策にもお役立ていただけます。
もちろんクレディセゾンでは、各種データの管理も徹底。信頼性と安心感を兼ね備えた広告配信を実現します。
<セゾンデータの基本情報>
クレジット会員人数:3,500万人(※クレディセゾン単体は2,500万人)
■会員属性情報
信頼性の高い、カード発行時に登録する属性(性別・年代・年収など)の情報が含まれます。
- 年齢
- 性別
- 個人年収
- 居住地域
- 家族形態 など
■カード利用情報
信頼性の高い、カードの利用情報(利用した日付・場所・時間など)の情報が含まれます。
- 会員ランク
- 決済履歴(カードの利用場所、利用金、利用タイミング・頻度)など
まとめ
アドフラウド(詐欺広告)は、広告運用データの正確性を損ない、自動入札の障害になるほか、 無駄なコストが発生する原因にもなります。 日本のアドフラウド発生率は、世界トップクラスであるにも関わらず、広告主の多くが有効な対策を講じていないのが現状です。
アドフラウドの対策としては、ホワイトリスト作成・怪しいユーザーの特定・不正サイトの確認ほか、「セゾンDSP」のような「信頼できるDSP業者」を選ぶことが有効となります。クレディセゾンならではのDSPサービス「セゾンDSP」は、Webサイト・アプリ・SNS・ニュースメディアなど、様々な媒体に出稿可能です。
課題に沿ったサービス・データをご紹介しておりますので、不明点などございましたら、お気軽にお問い合わせください。