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行動経済学の基礎とマーケティングに応用できる理論7選【マーケティングコラム】

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さまざまなビジネスシーンで応用できる学問として近年注目されている行動経済学。特に、顧客の心理に働きかけるマーケティングとの相性は抜群です。この記事では、そもそも行動経済学とはどんな学問なのかといったところから、マーケティングに応用できる行動経済学のさまざまな理論まで詳しくご紹介します。

 

行動経済学とは

 

 

行動経済学と経済学の違い

行動経済学は、経済学に心理学の視点を導入した比較的新しい学問です。人間を必ずしも合理的ではない存在ととらえる点が、これまでの経済学と大きく異なります。

これまでの経済学では、「人間は常に自分の利益を最大化するような合理的な行動をとる」と想定することで、抽象的な経済現象をとらえることに取り組んできました。ところが、現実には人間のとる行動は常に合理的とは限りません。その時々の心理状態によってものの見え方は変わるものであり、判断の基準は常に揺らいでいるからです。

行動経済学では、こうした人間の行動の不合理な側面を心理学の手法で分析。人間の経済行動をより現実に即してとらえようとする学問なのです。

 

マーケティング分野で行動経済学が注目される理由

では、どうして行動経済学はマーケティング分野で注目されているのでしょうか?行動経済学と関連の深い言葉に「ナッジ(nudge)」というものがあります。これは、「注意を促すために相手を小突く」というような意味で、放っておくと不合理な行動を取りがちな人間をそれとなく誘導し、より良い結果へと導くことを指します。この考え方が、マーケティング分野で必要とされているのです。

市場が成熟した現在において、商品そのものの品質や価格で差別化を図ることは難しくなってきています。そこで行動経済学の出番です。人間が購買行動を起こす心理そのものに着目し、その心理にそれとなく訴えかける仕掛けによって、自発的な購買行動を促しやすくなります。

 

行動経済学は本当に有効か?

比較的新しい分野である行動経済学ですが、その有効性は世界に認められており、2002年にはダニエル・カーネマン、2017年にはリチャード・セイラーといった行動経済学の研究者がノーベル経済学賞を受賞しています。行動経済学の理論は実社会のさまざまな場面で活用されており、例えば米国における確定拠出年金、401kプランの加入促進などにも取り入れられて成果を上げているのです。例えば日本人に馴染みのあるものでいうと、「松竹梅の法則」があります。値段別に松:1万円、竹:5千円、梅:3千円の商品が有るとすると、自然と中間の商品(金額)を選びやすい心理が働くのは誰しも経験があるのではないでしょうか。

 

マーケティングに応用可能な行動経済学の理論

それでは、実際にマーケティング分野で活用できる行動経済学の理論を見ていきましょう。

 

 

現在志向バイアス

現在志向バイアス(現在バイアス)とは、将来得られる大きな利益よりも、目先の小さな利益を優先してしまう心理のこと。実験では、今すぐ10万円をもらうか、1週間後に10万1,000円をもらうかという選択で、多くの人が前者を選ぶことが明らかになっています。

これをマーケティングに応用すると、即時性を強調することで購買意欲をそそることに繋がります。「買った当日から利用可能」「利用後すぐに効果が現れます」など、「今すぐ利益を得られる」文言をキャンペーンや広告文に含ませることで、現在思考バイアスの効果を得られます。

 

サンクコスト効果

サンクコストとは、「すでに支払いが完了していて、回収することができないコスト」のこと。これには金銭だけでなく、時間や労力も含まれます。多くの人は、支払ったコストをなんとかして取り戻したいと考えます。賭け事を勝つまでやめられなくなったり、バイキングでお腹が苦しくなるまで食べてしまったりするのもこの心理です。また保険の「満期返戻金」がついている商品などもサンクコスト効果を意識した商品設計ではないでしょうか。

マーケティング分野ではスタンプカードなどが該当し、「ここまでスタンプを貯めてきたのだから」という心理が購買の継続につながります。マンガサイトの無料試し読みのようなお試しサービスも、「せっかく登録したのだから」「ここまで読んでしまったし」という心理を利用して有料サービスへと誘導する効果があります。

 

アンカリング効果

アンカリング効果の語源は、船の錨(アンカー)。その名の通り、初めに示された情報が強く印象に残り、その後の判断に影響することをいいます

マーケティングへの応用はシンプルです。初めに定価をアンカーとして提示して、それから値引きを提示すれば、たとえ値引き後の価格が相場価格とそれほど変わらなかったとしても、実際以上に「お得感」を感じさせることができます。価格を提示した後に次々とオマケをつけていくテレビショッピングの演出も、アンカリング効果を狙ったものといえます。

 

フレーミング効果

フレーミング効果は、同じ意味のことであっても、強調するポイントを変えることで受け手にとっての印象が変わることをいいます。受け手の解釈の枠組み(フレーム)に働きかけるというわけです。

マーケティングでは、事実をよりポジティブな表現に言い換えることで購買意欲を高めることが期待できます。「参加者100人中10人に当たる」と「9割はハズレ」は同じ意味ですが、前者の表現であれば「もしかしたら当たるかも…?」と期待がふくらむのではないでしょうか。

 

おとり効果

おとり効果とは、ある商品の購入を迷っている際、それより劣る選択肢を提示されると、優れた商品を購入する意思が強まる効果のこと。2つの競合する選択肢に新たに1つ選択肢を加えることで、購買者の選択に影響を与える手法です。

例えば、値段は高いがデザインも性能も良い商品Aと、安くてデザインと性能はそこそこな商品Bで顧客が迷っているとします。そこで、Aを売りたい場合は、値段やデザインがAと同じで、性能が少し劣る商品Cを選択肢に加えてやるのです。そうすると、顧客は自然とAとCとの比較に目が行き、最終的にAを購入するというわけです。

 

バンドワゴン効果

バンドワゴンとはパレードを先頭で率いる楽隊車のこと。バンドワゴン効果とは、多数の人が支持している選択肢を選び取りたくなる心理のことをいいます。

バンドワゴン効果はマーケティングで非常に幅広く使われています。「大人気!」「売上◯◯個突破!」といった謳い文句のほか、SNSでの話題性を狙うインフルエンサーマーケティングなどもこれに含まれます。

反対に、大勢の意見とは逆を選びたいという心理を「スノッブ効果」といいます。バンドワゴン効果とスノッブ効果は両立する側面もあり、人気ブランドの限定商品の展開などは、流行に乗りつつ個性的でありたいという両方の心理をうまく取り入れています。

 

プロスペクト理論

プロスペクト理論では、人は「得をすること」よりも「損すること」を過大に評価してしまうとされています。この理論を応用して、「買わなければ損をする」というアピールで購買意欲を刺激することができます。

「今だけ●●%OFF!」や「知らないと損する●●術」といった煽り文句などがこれに当たります。逆に、「気に入らなければ返品OK!」といったように損失への不安を取り除くことで購買を促す手法も有効です。

 

まとめ

身の回りでよく目にするマーケティング手法の多くが行動経済学の理論で説明できることがおわかりいただけたでしょうか。顧客の心理を理解することで、ターゲットにどうアプローチするかが明確になってきます。行動経済学でマーケティングに差をつけましょう。

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