マーケティングには、さまざまなフレームワークが存在します。そのうちのひとつが、SWOT分析です。日々の業務の中でその名前を耳にしたという人も少なくないと思いますが、SWOT分析をビジネスに活かした経験がある方はさほど多くないのではないでしょうか。
本記事では、SWOT分析の目的や分析方法、活用のポイントなどを詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしてください。
■SWOT分析とは?
SWOT(スウォット)分析は、「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の頭文字をとって名づけられたマーケティングのフレームワークです。
この分析は、自社を取り巻く環境を正確に分析することで、環境要因を正確に把握するものです。市場機会や事業上の課題などを発見するのに有効であるため、経営戦略や意思決定、経営資源を最適化する際に用いられています。
Strength:強み
「強み」は、自分(自社)の努力次第で変えられる内部要因のひとつです。企業内部の特質の目標達成に向けて、プラスにはたらくものを指します。ライバル(競合他社)と比べて、優位性がある要素ともいえるでしょう。
「強み」をさらに伸ばすことで、他社との差別化を図り、優位性をさらに高めていくことができます。
Weakness:弱み
「弱み」は「強み」と同様、自分(自社)内部の特質のひとつです。「強み」とは反対に、目標達成をはばむマイナス要因となりうるものです。または、目標達成には重要であるにもかかわらず、現状は不十分な状態にあるものとも言い換えられます。
「弱み」の要素を設けることで、こうしたマイナス要因を補強したり、克服する方法について考えることができます。
Oppotunity:機会
「機会」は、自分(自社)では変えようのない外部要因のひとつです。目標を達成するため、プラスに働いてくれる外部要因や環境の変化のことです。新技術の開発、流行やブームなども、これにあたります。
自分(自社)の強みを活かしつつ、競合の少ない市場を見つけて勝機を得る――そういった方向に、この分析をつなげることができれば理想的だといえるでしょう。
Threat:脅威
「脅威」は、自分(自社)の目標達成においてマイナスに働くような外部要因や環境の変化を指します。自分(自社)では変えようのない要素だけに、「脅威」の影響を弱める方法や回避できる方法を考えることが重要になります。
規制緩和や景気の動向、少子高齢化などから顧客のニーズに至るまで、さまざまなものが外部要因になりえます。
■SWOT分析の方法
では、先述した4つの(SWOT)を埋めたあと、実際にどのように分析していけばよいのでしょうか。ここでは、次に重要になるクロスSWOT分析のための第一歩として、SWOTを分析する方法を手順を解説していきましょう。
外部環境(Opportunity・Threat)を分析する
SWOT分析の手順としてはまず自分(自社)がコントロールできない外部要因(機会・脅威)から分析することをおすすめします。
政治や社会、文化、経済といったマクロな外部要因とともに、顧客や流通業者、競合他社といったミクロな外部要因を分析していくことになります。この際、PEST分析や5フォース分析といった他のフレームワークで収集した情報をマーケティング環境情報としてSWOT分析に応用することもあるので、覚えておくとよいでしょう。
内部環境(Strength・Weakness)を分析する
次に、自分(自社)でコントロール可能な内部要因(強み・弱み)の2つを分析していきます。一般的には、ブランドの認知度や品質、資源、インフラなどが内部環境とみなされています。
これらの内部環境をSWOT分析するにあたって、より正確な分析結果を出すために重要だと言われているのが、主観的な判断をもとにするのではなく、数値として判断可能なデータを用意することです。
さらに大切なのが、分析結果をもとに戦略・戦術を立てることであり、そのために必要なのが後述するクロスSWOT分析です。
■クロスSWOT分析の方法
これまでの過程でSWOTのすべての要素を埋め、分析することができました。しかしこれは、自分(自社)が置かれた状況を分析したに過ぎません。
ここから必要になるのが、経営戦略や戦術を策定し、当初目標として掲げた項目を達成することです。その戦略策定に重要な役割を果たすのが、要素を組み合わせて解釈するクロスSWOT分析です。ここでは、クロスSWOT分析の方法を解説します。
強み × 機会
クロスSWOT分析を行う際に重要なのが、それぞれの要素のかけ合わせで、どのような戦略が描けるかということです。
自分(自社)の強みを活かそうと考える場合、事業の成長を目指す場合など、戦略・戦術を練る際の大きなヒントになります。もっとも重要に要素になるのは、「強み」と「機会」のかけ合わせです。
強み × 脅威
自分(自社)の強みを活かすことで、自分たちでは変えることができないマイナスの外部要因を避けたり、プラス要因へと転じる方法を考えるのが、この「強み」と「脅威」をかけ合わせる方法です。
実際、一時的には脅威としてしか感じられないようなことも、対処方法によってはビジネスチャンスになるといったことが少なくありません。
脅威を回避する方法を考えるだけでなく、チャンスにできる方法を探れるように議論を重ねていくことが重要です。
弱み × 機会
「弱み」というのは通常、なくすべきものとして認識されます。しかしそう考えるだけでは、「弱み」を「機会」に転じ、ビジネスチャンスを広げる方向にはつながっていきません。
「弱み」と「機会」のかけ合わせは、自分(自社)の「弱み」を知り、それをいかに補強するかを考えるだけでなく、「機会」として活かす方法を考えていくことを意味します。せっかくの機会だからこそ、それを活かすためにどう対処すべきかを議論することが重要なのです。
弱み × 脅威
自分(自社)の弱みに、避けようがないマイナスの外部要因が重なると、大きなダメージを受けることが少なくありません。そんな事態を避けるべく、もしくは最小限のダメージですませるためにどうすべきかを考えるのが、「弱み」と「脅威」をかけ合わせてのクロスSWOT分析です。
「脅威」のレベルははかりがたいものであるだけに、日頃から自分(自社)の「弱み」をしっかり把握・理解し、「脅威」を「機会」に転じる戦略を策定することが重要になります。
■SWOT分析の例
SWOT分析の方法・理論については理解できても、なかなかイメージがつかめないという方もいらっしゃるでしょう。ここでは、実際の企業によるコンビニエンスストアの経営を例にSWOT分析とクロスSWOT分析を行い、実践する際の手がかりにしていただきたいと思います。
・SWOT分析の対象企業:コンビニエンスストアチェーン・小売チェーンを経営する大手企業
「強み」:コンビニエンスストアチェーンとして大手である
コンビニエンスストア・小売チェーンを抱えて、業態別に顧客を取り込んでいる
地理的・業態別にも収益を分散できている
流通においても大きな支配力を持っている
他のコンビニエンスストアチェーンとの差別化に成功している
「弱み」:コンビニエンスストア業界としての成長率が鈍化の傾向にある
営業のコスト増・競争の激化のあおりを受け、営業利益率が低下している
赤字が続くフードサービス事業をなかなか撤退できない
かつての経営統合の効果があらわれていない
「機会」:アジア地域において流通事業が成長する見込みがある
コンビニエンスストア業界と自治体との連携が活発化している
異業種間で共同出店するコンビニエンスストアが増加している
「脅威」:消費者の節約志向・生活防衛意識が高まりつつある
生活必需品の市場価格が低下し続けている
コンビニエンスストアにおけるサービスの差別化が難しくなっている
ネット販売が増加している
「強み」×「機会」:流通大手としてアジア圏での成長に期待できる
業態別に抱える多数の顧客によって、自治体・異業種間の提携がしやすい
「強み」×「脅威」:小売チェーン大手として、
他のコンビニエンスストアとの差別化・ネット販売の充実を図れる
「弱み」×「機会」:コンビニエンスストア業界の成長鈍化を、流通業界における成長の機会に転化する
「弱み」×「脅威」:営業のコスト増などをネット販売への注力などでカバーする
■SWOT分析を活用するためのポイント
SWOT分析を最大限活用するためにはいくつかのポイントがあります。ここでは、SWOT分析を事業や戦略に活かすためのポイントを解説します。
SWOT分析のメリット・デメリットを理解する
SWOT分析に限らず、フレームワークを活用するうえで重要になるのが、そのメリット・デメリットを理解することです。
SWOT分析のメリットは、内部・外部の環境を客観的に捉えることで、自分(自社)の現状を把握しやすくなるという点にあります。さらに、クロスSWOT分析によってさまざまな側面に目を向けられるのも大きなメリットです。分析において十分に考えを深めることで、分析対象への理解が深まりやすくなります。
一方、SWOT分析のデメリットは、内部環境を「強み」「弱み」の2つにしか分類できないということです。どちらとも取れるものもありますが、SWOT分析を行うためには、どちらかに分類せねばなりません。
分析の目的を明確にする
SWOT分析の事前準備として大切なのが、分析を行う目的を明確にするということです。SWOT分析の目標を明確にしていなければ、それぞれの要素に挙げる項目がさほど重要でなくなったり、現状分析した結果を活用する方法を見失ってしまいがちです。
分析のために分析を重ねるといった事態に陥らないよう、事前準備を十分に行い、分析の目的を明確にしましょう。
なるべく多くのアイディアを出す
SWOT分析においては、ひとつの事柄をどの要素に入れるかの判断がむずかしいことも珍しくありません。
だからこそ、なるべく多くの視点を取り入れ、さまざまな側面からアイディアを出すことが重要です。ひとつの事実をどう解釈するか、どのように組み合わせるかで、分析結果やそこから導き出す戦略目標も変わってくるからです。いくつもの戦略・戦術を作成することで、自分(自社)にとって最適なものを選べるようになります。
■まとめ
自分(自社)を客観視し、状況を正確に把握したうえで経営戦略・戦術を策定できるSWOT分析は、数あるマーケティングのフレームワークの中でも効果が高いもののひとつです。しかし、「SWOT分析の理論や方法を理解したとはいっても、自分たちがそのメリットを十分に活かせるとは思えない」という方もいらっしゃるでしょう。
クレディセゾンのマーケティングソリューションは、これまで数十年にわたって蓄積したビッグデータを企業分析に活用し、よりよいプロモーションを展開するための分析を手助けしてくれます。
SWOT分析を行い、自社の「強み」「弱み」「機会」「脅威」を把握したうえで、さらなるマーケティング戦略をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。